古森(ふるもり)の図書室

森の奥に居場所を探して...

庭師サムワイズ

ガンダルフが闇に落ちたあと、
ボロミアの死、そして
9人の旅の仲間たちは3つに別れてしまった。

ピピンとメリーは、オークに捕まったところをファンゴルンの森で助けられ
木のヒゲの肩に乗って、一緒に
エントたちの集会へと向かう。

ファンゴルンの森でガンダルフと再会したあと、ローハンのセオデン王のところへ

そして
危険な指輪を葬るべく、たった二人で旅を続けるフロドとサムを
次に捕らえた人物たちは・・・

なんと、あのボロミアの弟、ファラミアの率いる
{ドゥネダイン}の生き残りであった。

「こんなところに・・なぜ? 小さい人たちが?」
という疑問を持ったまま、フロドとサムを隠れ家に連れていく。

その洞窟の中での語り合いで
ファラミアは ホビットたちの純朴ながら、高潔な意思に気づく。

指輪の9人の仲間の1人だった、ボロミアが死んだ時の状況を、ファラミアは知らない。
フロドとサムは、この目の前のファラミアがボロミアの兄だということを、聞いた時のこと


その時のファラミアとサムとの やりとりの言葉を書き写してみよう。

こちらは 原作の翻訳、
指輪物語』J.R.R.トールキン著   ~ 「二つの塔」下巻の 五 「西に開く窓」より抜粋 :


(サムがボロミアに対して感じていたことを、思わず口に出してしまう・・)

・・・・・・

「あの方(ボロミア)は欲しい欲しいと思ってなすっただ、われらの敵の指輪を!」

(・・あっ! ・・言いすぎた。。。と一瞬、思うサムだったが、それでも
やっぱり言う。)


「今こそ、お前さま(ファラミアのこと)のお人柄を示してくださる機会ですだ。」



「どうもそうらしいな。」

ファラミアは ゆっくりと非常に低い声でそういうと、
不思議な微笑を浮かべました。

「それでは、これがすべての謎への答えであったか!
  この世から消えてなくなったと言われていた 一つの指輪か。

   ・・それを、ボロミアは  力ずくで取ろうとしたのだな?
   そして、そなたは逃げた。というわけか?

  そして、はるばる逃げてきたところといえば・・・私のふところだ!
  そして、人けのない荒地の この場所で、そなたたちは私の掌中にある。
  小さい人 二人に、私の命令を待機している多勢の部下たち。
  それと指輪の中の指輪というわけだ。

 思いもかけぬ幸運ではないか!
 ゴンドールの大将、ファラミアがその人柄を示す機会とはな!  はは!」

・・・

しかしファラミアは再び椅子に座り直し、静かに笑い出しました。

それから不意に また、真面目な顔になって言いました。

(・・・ここで、失言したと焦るサムを安心させる。)

「サムよ、そなたの心には誠実さだけでなく洞察力もあって、
    その目よりも もっとはっきり見ているのだ。」

 ・・・・・・・(ファラミアの思いを伝える)

「 さてさて、フロドよ。 われらはこれで やっと互いにわかりあったな。

    もし そなたが他の者たちから頼まれて、不本意ながら この品を我が身に引き受けたのであれば、
    私は そなたに同情もするし、敬意も表する。

    そして これを隠し持ったまま使わない そなたに、ただ感嘆するのだ。

    私にとって そなたたちは新しい種族であり、新しい世界だ。
    そなたたちの種族は、皆こうなのかな?
    そなたたちの国は満ち足りた平和な国土であるに違いない。

    そして、そこでは   庭師というのは 非常に重んじられているに違いない。」


・・・・・・・



(ファラミアが指輪の誘惑に勝ったことを感じたサムは、)

「あなたは良い機会を おつかみになりましただ。
   そして、あなたの人柄を示されましただ。この上なく高潔な人柄を。」

(それに応えてファラミアは)

「いやいや、褒められる値打ちのある者から褒められることは
   どのような褒美にも勝る。
  しかし、このこと自体は何も褒むべきことはないのだ。

  私は あれ以外のことを しようという 誘惑も望みも持たなかったからだ。」



「 あなたは どことなく・・・ガンダルフを、つまり魔法使いを思い出させるところが
   おありでごぜえますだ。」

「 そうかもしれない。 おそらく、そなたは

    遥か遠くからヌメノールの風(ふう)を認めたのかもしれないな。」




・・・・・・


サムとファラミアの語り合いのシーン、
なんとなく印象に強いので、とりあえず書き留めておく。

こののち、ファラミアはフロドとサムを解放し、旅に必要な物資も持たせてやる。


・・この時の、ボロミアのことを知ったあとの
この時の ファラミアが
指輪を自分の物にしたいという誘惑に勝てたことが
そして二人を旅の続きに送り出せたことが
重要な転換期じゃなかったか、とも・・・思えてくる。


・・・・・・





(庭師を重んじるのは、よい処である・・・とファラミアが感じたあたり、
   そして、フロドを あくまでも「主人」と思い、何かと世話を焼くサムも、
  そしてそれをごく当たり前のように、サムに世話をしてもらうフロドにも、

  もしかしたら、

  トールキンにもイギリスの階級制度の文化が深く根付いているしるし?
・・・かもしれない。
  このイギリスの身分の差だけど、しかしそれは決して
 {どの身分が優秀で、どの身分が劣る}とかいう意味ではなく、


それぞれの身分には、それぞれの誇りがあり、それぞれの幸せがある、という思想なのだとか、

確か、林望さんも イギリスに関する色々なエッセイの中で書いておられたと思う。

 ・・この考え方が、すっと納得できるには、
(特に儒教の精神に浸ってる人ほど?)
発想の転換を、頭を柔軟にする必要があるかもしれない。
・・・などと知ったような風をして言う私だって・・・まだまだ、
イギリス人の ものの考え方を知り尽くしては いない・・

しかし、
この指輪物語の全編を通して読んでいくうちに感じるのだが、
あの辛い旅の中で、
この「主人」である フロド と 「庭師」である サムとの間の友情は、とても強い絆があると思う。
そう感じされられる場面が、その絆に ハッとさせられ、また感動する場面が、何度も出てくる。

。。。。。

フロドが「勇者サムワイズのお話も忘れずに」と言った時、
サムは   「真面目な話を、茶化さないでください」と返す。
しかし、フロドも
 サムの目を真っ直ぐに見つめ返して 「僕も真面目だ」  (・・と、これは映画の中のシーンだった。。)