古森(ふるもり)の図書室

森の奥に居場所を探して...

王の癒しの葉

療病院・・という場所が出てくる。
深い傷を負った者たちが、そこで癒され快方にむかうのを待つ。


ゴンドールの王となったアラゴルン
その療病院を訪れる。

その昔からこの地方に伝わる、「王の葉」と呼ばれるアセラス草を使って
彼らを癒していく様子が書かれたシーンを読むと

その葉っぱがもたらす空気の描写は
読んでいるこちらまで癒されていく気がして
ふと、時々、読んでみたくなる。

。。。。。。


日本語訳 : 瀬田貞二 田中明


(文庫本の上巻)第 8  『 療病院 』 より

ところどころ、抜粋してみる。


・・・・・・・・・

「 アセラスは あるかね?」
「 またの名は『王の葉』と呼ばれているのだが。
      この名前でなら、多分知っているのじゃないかね?
       当今では田舎の人たちがそう呼んでいるから。」

(療病院のヨーレスは王の葉は知っていたが、その薬効については知らなかった。)

「なにしろ、あれに何か大した薬効があるなんて聞いたことございませんでしたから。。
    森なんかでよくあれの生えている場所に行き当たったりしますとね、
     『王の葉』だって。妙な名だねぇ。何でそう呼ばれるのだろう。と・・・」



・・・・・・

ようやくベアギルが駆け込んできました。
少年は布に包んだ六枚の葉を持っていました。


「 王の葉 です。 でも摘みたてじゃないようです。
    摘んでから少なくとも二週間は経っているようです。
     役に立つでしょうか?」

少年はそれからファラミアに目を注ぎ、どっと涙を溢れさせました。

しかし、アラゴルンは にっこりして言いました。

「 役に立つとも。最悪の状態は もう終わった。心強く思って ここにいるといい! 」


それから彼は、葉っぱを二枚取って両手に乗せると ふっと息を吹きかけ、
それから揉みつぶしました。

すると たちまち新鮮な空気が部屋に 満ち満ちました。


あたかも空気それ自体が目覚めて打ち震え、喜びにきらめくかのようでした。

それから彼はその葉っぱを
運ばれてきた いくつかの湯気の立つ椀の中に投げ入れました。



すると、たちまち みんなは 心が軽くなりました。
なぜなら、一人一人のもとに匂ってきた芳香は、
どこの国か
翳ることのない陽光の輝く
露しげき朝まだきの記憶にも似ていました。

もっとも
この世の春の美しい世界自体が、
このどこの国とも知れぬ地の 束の間の記憶に過ぎないのですが。


しかし、アラゴルンは元気を取り戻した人の様に立ち上がりました。
そして夢うつつに眠るファラミアの顔の前に
椀の一つ一つを差し出しながら
かれの目は微笑を浮かべていました。


・・・・・・

「 もう影の中を歩まず、目を覚まされよ!」


・・・・・




ガンダルフの後についてドアを閉めようとする時、
ピピンはヨーレスが大きな声で言うのを聞きました。

「 王様だって! お前さん聞いたかね? 私は何て言ったかい?
       癒しの手  って言ったろう。」