古森(ふるもり)の図書室

森の奥に居場所を探して...

「おくのほそ道」の世界から

もうずいぶん前から、行ってみたいみたいと思いつつ
未だに実現できていない憧れの地へと誘う本を

と、思っていたら、
あの 昨年のイギリスのお話を描かれたコミックス(東のはて通り異聞)
の作者が
今度は 芭蕉をモデルとした新しいシリーズを出しているので
さっそく読み始めたら・・・見事、嵌まってしまった。

おくのほそみち秘録 『 鳥啼き 魚の目は泪(なみだ) 』

このタイトルにある句は
芭蕉の 「おくのほそ道」の中で
江戸を出発する際に詠まれた句とあるのだが

( 行く春や 鳥啼き 魚の目は泪 )

深川から、第一宿の千住まで船で行くときの句らしい。


江戸時代に入ってからは、それ以前よりは大分、旅もしやすくなったとはいえ
まだまだ不安も多かったかもしれない。

が。

この句を観ると 

行く春を 鳥も啼いて(泣いて?)いるし、魚の目には涙が・・・

え? 魚の目は・・もともと水の中に居るのだから、
悲しくなくたって、いつも潤んでいるでは、ないか。

と、ちょっと芭蕉さんの ユーモアすら感じてしまう。


数ある芭蕉の句の中で、この「・・・魚の目は涙」 の句をタイトルに選んだ、
このコミックスの作者、吉川 うたた さんも同じくユーモアを感じたのだと思う。

それから
旅の中での芭蕉さん、
幾度も 魂鎮め を していくのだが ( 夏草や つわものどもが 夢のあと ・・の様に )
あれこれ、色々な方達の解釈や説明を読んでみても

戦の虚しさを言いつつも、いつの間にか戦場の雰囲気に酔ってしまう男性の多くとは違って
このコミックスの作者、吉川さんは女性の感性が生きているのか
全体を通して、
決して戦さを美化しない(と、私は感じた)ところが良いと思う。。。