古森(ふるもり)の図書室

森の奥に居場所を探して...

エントとエント女の話

ファンゴルンと名付けたのはエルフらしい。
木の髭 と呼ばれる、巨人・・・というか・・森の牧人。守り手。
ファンゴルンの他にも、森を守る者たちを総じて
エント。という。
そのエントたち、何故 減ってきてしまったの? というホビットの問いに

木の髭は
「その、ホビットの村は エント女たちが好みそうだ。エント女を見かけなかったか?」
と問いつつ、エント女の話を聞かせる。


昔は エント女が おったのだけど、居なくなってしまった。

その 「エント女」のお話の部分を読むと
・・・確かに、今の人間たちには魅力的な豊饒の女神の様な存在に思える一方で

まさしく、森の好きな者には 哀しいお話に感じてしまった。

以下、指輪物語の日本語訳から 抜粋してみる :

。。。。。。


「これは ちょっと変わった悲しい話なのよ。」(と、エントが語り始める)

「世界がまだ若く、原始の森が広々と広がっていた頃、エントたちとエント女たちとは
   ともに歩き、ともに住まっていた。
    ところが わしらの心は同じふうには育っていかなかった。
   
    エントたちは、この世界で出会ったものに親しみをもった。
そしてエント女たちは また別のものを心にかけた。

何故ならエントたちは大木を愛し、原始の森を愛し、高い山々の斜面を愛し、
そして山を流れる水を飲み、かれらの歩く道に木々が落としてくれる木の実だけを食べた。
また かれらはエルフたちのことを知り、木たちと話をした。

だが エント女たちは
もっと小さな木や、森の麓(ふもと)の かなたに広がる日当たりの良い牧場(まきば)に心を向けた。
そして春には茂みに りんぼくが実り、野生のりんごの花や桜の花が咲くのを、
夏には水辺に緑の野草を、秋の野には実を結ぶ草を見た。
(しかし?)
彼女らは こういうものと話をしたいとは思わなかった。
ただ、
これらのものが 自分たちのいうことを聞き、従うことを願った。

エント女たちは、これらのものに
彼女たちの願い通りに育ち、
自分たちの気にいるような葉を茂らせ、
実をならせるように命じた。

エント女たちは、秩序と豊饒と平和を欲したからな
(彼女たちの意味する「平和」とは、物は置いた所にいつもちゃんとなければならない、ということなのよ)

そういうわけで、エント女たちは、庭を作って住んだ。
だが、わしらエントたちは なおもほっつき歩くことを止めず、
庭には、 ときたま行くだけだった。

やがて北方に暗黒がやってくると、エント女たちは大河を渡り、新しい庭を作り、
新しい畠を耕した。
暗黒が打ち破られた後、エント女たちの土地は豊かに花開き、
畠には穀物が溢れた。
多くの人間たちがエント女たちの技を学び、
彼女たちを多いに敬った。

それに反し、わしら(エントたち)は 人間たちにとっては ただの伝説、
森の奥の ひとつの神秘に過ぎなかった。
しかし わしらは今なお ここで こうして おる。

それなのに エント女たちの庭は すべて荒廃してしまった。

・・・・・・

ある時、彼女たちの土地に行ってみた。
しかし見出したのは、不毛の荒地じゃった。
そこは すっかり焼き払われ、何もかも根絶やしになっておった。

・・・戦争が、そこを通過したのよ。

だが、エント女たちは、そこにはおらなんだ。
その後長い長い間、わしらは ちょいちょいエント女たちを探しに出かけて行った。


・・・・・


そして、その エント女を探し求めるエントたちのお話は

エルフが美しい歌を作って歌い継がれたと・・・


。。。。。。


。。。。。


原始の森が好きな私は・・・エント女よりも
どちらかというと
エントたちに近い気持ちを持っているのかな?・・・と、感じながら

・・・このお話を 読んでいた。

(いや・・それよりも・・・
作物を育てる才能が無いと自覚し始めたせいもあるかも・・?)





・・・《 指輪物語 》J.R.R.トールキン   日本語訳: 瀬田貞二田中明

( 第二部 「二つの塔」の四:「木の髭」の部分より抜粋。)