古森(ふるもり)の図書室

森の奥に居場所を探して...

森の守り人

長野県の黒姫というところで、日本の森を守り育てている C.W.ニコルさんの本を読みました。

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「アファンの森の物語」 C.W.ニコル著 2013. 2.20 発行


日本の中の森を、何故 「アファン」という名前をつけたのか、
そのことが第2章に書かれてあります。
 
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ニコルさんの故郷、
ウェールズという土地はケルト人が古くから住んでいた処だそうで
「私たちケルト人や多くの先住民は、名前には力と魔力があると考えている。」
と・・・
そして、「アファン」という言葉は
ウェールズ語で「風の通る谷間」という意味なのだと


(現在のイギリスという国は
イングランドスコットランド・北部アイルランドウェールズ> の
4つの国々を ひとつに纏めたので
それぞれの お国柄には、強烈な個性の違いがあるとか。よく聞きますが・・・)


ニコルさんの故郷でも
どうも産業革命の頃から、木々がどんどん減っていったらしくて
日本へ来た最初の頃に見た、自然の森の美しさ、木々の種類の多さに
・・・特に、ブナの原生林は保水力も抜群で
実は美味しいので動物たちも集まり
実に魅力的な森を観たので
ニコルさんは 惹かれていって

ここ、日本に住もう!
・・と決めたのに
翌年のある日、もう一度、その素晴らしい森に行ったら・・

樹齢何百年という、古い木々も、すべて切り倒されていて・・・
残っているのは切り株ばかり・・
鳥たちや動物たちの姿もなく・・・

がっかりしたそうです。

そう、先進国に追いつけ追い越せの時代だった日本でも・・・
建築の材料になる、と植林された杉やヒノキ以外の
「雑木林」は
その頃は「役に立たない木々」と決めつけられて、どんどん切り倒されていった時代。。。

そして、植林された杉ですら、
その後の円高で輸入建築材に押され・・
世話をする人がいなくなって
その後の経済成長の犠牲になってしまったのは、私たちも知る通り・・・

これでは いけない。
あの素晴らしい森を、取り戻さないと!!

と、

とうとう、ご自身で森を守る行動に出た、
その エピソードや周りの人々の協力、実りある交流などの事柄が書かれています。

読み進んでいって、特に私が感動したのは・・
第6章の「英国アファン森林の奇跡」

本の森を守らないと・・・とは思いつつ、途方にくれていた時のニコルさんのもとへ
故郷のイギリスからアドヴァイスを求める手紙が来た。

ウェールズと日本との友好を記念するために、日本の樹木を植えたい。
    ウェールズの気候に合う日本の樹木を推薦してほしい、という。

それで故郷のウェールズに訪れたニコルさんは驚いた。

・・・

イギリスでも石炭を掘り出した後に出来た、
いわゆる「ボタ山」が放置されていた、その荒れた印象しかなかったボタ山
 見事な森に生まれ変わっていた!

 >谷は一面の緑に包まれ、川は サケやマス、
 >ムナジロカラス、アオサギカワセミといった生き物が住めるほど綺麗になっていた。

生育の早い木々から植え始め、
順々と生態系を蘇らせて森の再生に成功させたという話を聴き、
故郷に戻って観てきたことで
本の森の再生に希望と自信を持ち始めたお話も。

>・・・{ 日本に帰る時には、私は自分が何をすべきかが わかっていた。}

そして
今では ニコルさんの「アファンの森」と姉妹提携がなされているという。


・・・・・

この本には
一つの種類の木を密に植えすぎたまま、
手入れもせずに放置されて荒れた森を再生させるために
どんなことをしたか、わかりやすく書かれてあると思います。

>木や さまざまな植物が成長するにつれ、
>少しずつ肥えた表土が作られていく。
>小動物がやってきて、森を賑やかに、豊かにする。
>動物たちのフンの中から、ありとあらゆるキノコの胞子が
>目を覚ます。
>そして、死んだ土が ゆっくりと生き返る。


さまざまな植物が育つようにするには・・・

例えば
間伐して風通しをよくし、
その間伐材はストーブの薪に使ったり炭を作ったり。

小鳥たちが巣を作るには、
また、「うろ」のある老木が無い間は
巣箱をかける。
そうして戻ってきた鳥たちが、虫を食べてくれると
虫が増えすぎるのを防ぐことができる。

・・今でも時々見かける日本の山々の景色には
杉などの一つの種類の木が密生しているところがあるけれど・・・
やっぱり、動物たちも暮らしやすい自然の森の大切さを思ってしまいます。

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・・・・・・

はるばる、遠い国から来て
日本に永住することに決めて、
見事に森林の回復に成功した、ニコルさん、
その成果は、森だけでなく川も海も生き返らせる。
 
森が生き返ると
人々の心にも癒しを与えてくれる。
森で遊ぶ子供たちは
身体も心も、健康に育つ。と。。。
本の中で語られています。
 
素晴らしいと思いました。

・・・私なぞ、日本で生まれ育ったのに、
何も出来ていなくて、
ただ悲しんでいるだけであったのが恥ずかしい。


私は 自分では
ノコギリで木を間伐したり、
薪に切ったりすることもできないけれど・・・

でも、森も川も(そして海も・・・)
昔のように自然ゆたかな生き生きと蘇るのは嬉しいことだと思う!

こうして実践している方たちがいる、とわかると
なんだか希望が湧いてくる気がするのです。

自分にも・・・何か。。。出来ることは・・ないだろうか。
と思ってしまいます。